2017年06月16日

愛の予感


2017.Jun.11
☆☆★★★
東京湾岸に広がる高層マンション群。埋立地にあるこの新興住宅地は、中流所得層にとってあこがれの住居だ。順一(小林政広)は、新聞社で働く高層マンションの住人。妻は癌で数年前に亡くなり、今は娘との2人暮し。ある日、中学生の娘が、学校の教室で同級生の少女に刺し殺される事件が起こった。妻を失った順一は、続いて娘も失い、生きる希望をなくす。勤めていた新聞社を辞め、引きこもりの生活を続けていた順一は、1年後、北海道に肉体労働の職を得る。順一は、収容所のような民宿で寝泊りし、毎日夜明けに起きて、鉄工所へと向い、働く。帰宅すると、日没とほぼ同時に眠りにつく。そんな順一は、民宿で賄いの仕事をしている女、典子(渡辺真起子)と出会う。典子は、順一の娘を殺した子の母親だった。典子もまた、身を隠すように東京を離れ北海道の僻地でひっそりと生活を営んでいたのだ。被害者の父親と、加害者の母親とが、偶然にも顔を合わせた。2人は、毎日顔を合わせるものの、互いに名乗ることもなく、言葉を交わすこともない。知ってか知らずか、順一は典子の作った食事を口にしない。ご飯と味噌汁、生卵だけをひたすらに食べ続ける。それでも、順一は原罪を背負ったかのように生きている典子が、次第にかけがえのない存在になっていく。ある日、順一は、コンビニエンスストアでプリペイド式の携帯電話を2台買い、1台を典子に渡す。それが順一にとっての愛情表現だった。しかし、頑なに他者を排除して生きていた典子は、それを突き返す。そして、順一を徹底的に拒絶する。ところが、典子は、順一を拒絶すればするほど、自分の内部で、何かが変わってきていることに気付き始める。乾ききった典子の心に、次第に潤いが漂う。今度は、典子がコンビニで携帯電話を2台買い、その1台を順一に渡す。しかし、順一は、その携帯電話を屑篭に捨ててしまう。そんな中、順一はついに典子の作った食事を口にし、2人の関係も、2人の日常も少しずつ変化し始める。2人は、心を通わすことが出来るのか。

ひとり娘を娘の同級生に殺害された男と加害者の母親。事件以降、頑なに他者との触れ合いを避けて生きるふたりが出会い、絶望と罪悪感を抱えながらも再生への光を見出すお話。第60回ロカルノ国際映画祭金豹賞(グランプリ)受賞作。娘を殺した子の母親に愛を感じてしまった精神構造が複雑な日本の純文学的話ですな。変わらない日常を示すためか、同じシーンが何度も繰り返されるのは辛いね。どこが変わったかの違いが、内面的変化を露わしてはいるのだけれど。
愛の予感 THE REBIRTHを買って観る
こちらの愛の予感 THE REBIRTHレビューも参考に
posted by どん at 22:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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