
2014.Jan.19
☆☆☆★★
常陸国の百姓仙太郎(仲代達矢)は、貢租の減免を願い出たことから強訴とみなされ、北条の喜平一家に村から追われた。復讐の念に燃える仙太郎は、芸者お蔦(若尾文子)の世話になりながら、江戸で剣法の修業を積み、博徒となって故郷に向かった。途中、仙太郎は仕置きの自分を助け起してくれた甚伍左親分(中村翫右衛門)に会い、娘お妙(十朱幸代)への伝言を頼まれた。お妙の家では、彼女の父が“天狗党”に加わっているとし、喜平一家の者が暴力をふるっていた。仙太郎は思わず抜刀、その腕の冴えに、偶然立会っていた天狗党水木隊長(神山繁)と隊士加多(加藤剛)は、尊皇攘夷、世直しのために決起する党への参加を説いた。天狗党挙兵の知らせは筑波山麓から全国津々浦々に拡がり、仙太郎の働きは幕府軍の恐怖の的だった。だが、ニセ天狗党の出没で百姓たちの信用を落した天狗党は、それを水戸浪士ながら諸藩連合派に属す吉本(鈴木瑞穂)や甚伍左の策動と睨み、仙太郎を刺客兼、使者井上の護衛役として、江戸行きを命じた。仙太郎は会合の場で、お蔦に出会ったが、落着く間もなく、救いを求める井上の声に吉本を斬った。しかし、この非常手段も天狗党の敗色を挽回するには至らなかった。水木は、天狗党の首脳部武田耕雲斎らを嘆願によって助命さすべく、それまで従ってきた百姓、やくざ、町人らを斬った。それは、士分以外の者がいては単なる暴動とみなされ、全員死罪は免がれ得ないという判断からだった。武士の言を信じた仙太郎もまた粛清のはめに陥入った。
若尾文子もの。1969年、山本薩夫監督作。社会派時代劇といった趣ですかね。「天狗党の乱」とか「元治甲子の変」と言われる史実があり、「安政の大獄」や「桜田門外の変」にも関係していたのですな。農民や町民のために始まったことが、尊王攘夷運動に巻き込まれ、組織としての目的や求心性が崩壊していくわけ。若尾ちゃんは、出番も少なく、斬られてしまい、見所がなく残念。むしろ十朱幸代がフィーチャーされ、主役の仲代達矢や加藤剛など、一つの時代が変わったことを感じさせますね。